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個展に寄せて

 


                               新海浩之    日本リュート協会理事

 江花さんとの出会いは5年前のこと。赴任先のローマで体調を崩して中田医師の診療所を訪れ,壁にかけてある微妙な 色合いの絵が彼女の作品と知ってからだ。その後,私は著名古楽演奏家との交流がある彼女を通じてリュートの巨匠,ホプキンソン・スミス氏と知り合い,リュートを弾き始めた。江花さんは,いつも何かに突き動かされるように手を動かしている。古楽セミナーのために訪れたベネチアでは朝霧の中で描きつづける姿を拝見したし,お宅に招かれて私がつたない演奏を披露した晩も,突然デッサンをはじめるといった具合。

 日常の全ては彼女の心の目を通すと絵画の対象として映るようだ。そして,心で捕らえたアイディアをキャンバスの上に表現するためにはやはり手を動かすしかないのであろう。困ってしまうのは,絵のことばかりで自分の体調もわからなくなってしまうこと。「家族」同然の付き合いをさせていただいている者としては,もう少し健康に気を使ってほしいのだが。一流の音楽は聴くものにある種の映像を見せてくれるが,江花さんの絵画からは逆に音楽が聞こえるようだ。しかし,芸術の形式・方向性は異なっても,目指すものは変わらない。表現者,そして鑑賞者の心だ。

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